エクアドルのタマスカルという結婚式前の儀式

先日、エクアドル人の友人の結婚式に出席しましたが、一週間前に、タマスカルという儀式をやるけど、出席しないかとお誘いがあり、よく意味もわからずに同意しました。お誘いのメールに、サンペドロというメディシンをとりますと説明があり、きっとこれはサボテンかなにかだろうと予測はしていました。こちらの人は、サボテンやマッシュルームなどの自然のもので、幻覚作用のあるものは、シャーマンを含む儀式などで、数人から大勢の人でとり、ドラッグではなくメディシンと呼びます。そして今回の儀式は、スウェットロッジというサウナ状態のテントで行うとの情報もあり、ちょっと珍しい体験になることは予測可能でした。

当日の服装と準備するもの

儀式当日、サウナで汗だくになるので、濡れてもかまわない薄着とタオルを準備するように言われ、薄手のワンピースを持参して、儀式に向かう皆に参加すると、車で、田舎の屋敷に到着。庭が、そのまま畑や森につながっており、ものすごくパラダイスなロケーション。外では、儀式の準備が着々と整っていました。テントは、まだできていなかったけど、儀式的なありとあらゆる果物、木の実、石、水晶、植物などが、円を描いて形を作っており、サウナ用の石を焼く為に、火を炊きだしていました。石も、選ばれた石をシャーマンと花嫁花婿が清めのお祓いのようなことをして、一つずつ丁寧に並べて、その上に薪をまた丁寧に並べていきます。火が燃えだしてから、2時間くらい、石が完全に熱くなるまで皆でだらだらと、お喋りしながら待つなかで、サンペドロという、サボテンの入ったお茶のようなものがでてきて、それを一人一杯ずつ回しながら飲みます。

儀式で使うサボテン サンペドロ

儀式で用いられるサンペドロというサボテン、長くて一本まっすぐと生えるサボテンで、食べると幻覚作用を伴います。シャーマンがお茶のようなものを作り、皆で飲みましたが、味はものすごく苦くてまずいです。まだ、サウナ用の石が焼ききっていないので、サンペドロでちょっと軽くなったような気分で、ギターや歌を歌う人がいるなかで、いろんな人とのおしゃべりは続く。ロケーションがとても綺麗だったので、幻覚なんていらないんだろうな、と思いつつも、特にその効果もなく、その時点では、とてもマイルドなものだったと思います。

そして、ようやくテントが作られ始めます。木組みのものに、麻だか皮だかを何十に重ねた構成の先住民のテントのようなものでした。天井は低く、大きな円状の底面と、弓状の屋根部分。真ん中に行けば立てるかな?というくらい低い。
最初に花嫁花婿とその両親、親戚が、シャーマンによって導かれながら入場。その他大勢は、まだ10分くらい外で待ちながら、薄着に着替えたり靴を脱いだり。その後、まずは女性から入場、そしてそのあと男性。お清めのハーブなどが焼かれた煙を頭、胸、足の順にかけて、テントの入り口が低いので膝間づいて入る。
そして、左回りで、テントの脇を四つん這いで回って前の人が止まるところまで行く。なかは真っ暗で何も見えないので、手障りで、確かめながら行くと、いろんな人に接触、小声でこっちだと聞こえる方に、向かう。いろいろな薬草のお香の匂いがきつい。暗いなか、予測からして、2重か3重の円状に、人々が座っているのがわかる。真ん中の円は、シャーマンと結婚する2人と家族、次の円が、その他大勢になっているようでした。

暗いなか、ようやく自分の居場所を見つけ、あぐらをかいて座り込むと、隣の女性が私の手を握りしめた。私の名前は、パオラ、あなたの名前は?自分の名前を告げると安心したように、握りしめた手を緩め、微笑んだかのようでした。と、突然、何かが膝の上に乗って来たと思ったら、幼い少女だった。居心地悪そうに行ったり来たり。けっこう人数が多いので、ちょっと手を伸ばすとすぐ人に接触する。でも、皆、とても人懐っこく、接したり話しかけて来たり、まるでテントが何かの生き物で、私はその細胞の一つになったかのようでした。
周りの細胞は常に接触するものと情報を交わし、正常に働いているかを確かめる。すごくオーガニックで心地が良い。そうもしているうちに全員がテントに入り、儀式が始まる。シャーマンが挨拶をし、ゆっくりとした声で、話を皆一員をまとめてリードする為に、淡々とする。常に、コラソン、心という言葉がよく聞こえる。そして、太鼓と歌による音楽が始まった。どことなく放牧民の歌うような、強くて魂にあふれた音楽に、気持ちも高まる。その後、一人ずつ順番にスピーチが始まった。自分の思い、今回は、結婚というイベントの為なので、皆2人がくっついたことへの祝福の言葉を述べる。
私は、二人の魂が今ひとつになったことを承認、そしてきっと永遠に離れることはなくここで輝き続けるのだろうと、自分でもびっくりするくらいクサイことを言い出した。しかし、暗闇とお香の匂いとこの細胞間隔のテントと民衆、そして音楽が、サンペドロの効きを高めていることに気づく。

一人ずつ、スピーチをしている間に、皆、感情が高まり、すすり泣きがあちこちで聞こえてくる。スピーチの声も大体がソウルフルで、強い。誰かが何かを言い終わったあと、もしくは同意するようなフレーズを言ったあとには、アホーウと、返答することにも途中で気づいた。日本語で言ったら、ちょっと失礼なこの言葉、暗闇のあちこちから聞こえ、ちょっと楽しくなって、自分でも言ってみるとアホーウ アホーウと、鳥の返答のように、またあちらこちらから聞こえた。

全員がスピーチを言い終わったあと、先ほど焼かれた石の投入。一つずつ、大鹿の角ではさんで、テント内に持ち込み、真ん中のくぼみに投入していく。石の上にハーブを巻き、それらが焼かれてまた一段と匂いがきつくなる。そして、また歌を歌い始めながら、水を石にかけ始める。かけるたびに蒸気がテント内に立ちこめ、どんどんと温度も上がりだす。太鼓の音も、一段と大きくなった。先ほどまでの情緒が、忍耐へと変わっていくのがわかる。
歌声も高まり、叫びのようになり、その度に、石に水がまかれ、シューッという音とともに、どんどん温度が上がる。顔中に流れる汗を拭いながら、とりあえず歌に集中する。先ほどの幼い少女はどこへ行ったのであろう。息を大きくつきながら、サバイバルが始まったことに気がつく。感情に任せていたら、気が狂ってしまうような状況で、気づけば自分も歌に参加していた。意味はわからなかったけど、まねて歌ってでもしなければ、情緒に取り憑かれてしまう気がした。周りの数人も一緒に歌っていた。きっと、同じような気持ちであったのであろう。

そして、間もなく歌がやみ、シャーマンのガイドの声によって、今から休憩を挟むとのこと。やれやれ、とさっそくまた四つん這いになって外に出たい人のあとにつく。テントの外は、夜の闇で、キャンプファイヤーの火と、犬と何人か参加していない人たちが集っているのが見えた。なぜ私はここにいるのだろう、本物の現実はあそこだ、と頭の中では思いながらも、これは、友達の結婚式の儀式だと言い聞かせる。

2回目の集令があり、渋々、なかに戻る。子供や、子供を見る係の人だけ、外に残っていた。ふと、先ほどの少女の姿が見えた。中にまた這って入り、先ほど自分が座っていた位置につくと、暗闇のなか、小声で自分の名前を呼ぶ女性がいた。あなた、ここにいる?と聞いてくる。いるよ、と言うと、嬉しそうに手を握って、がんばれとでも言うようだった。

2回目は、また歌と太鼓と石に水かけるのが続いた。1回目よりも、温度や音楽が激しくなったような感じがして、とても堪え難いのがわかった。どちらかというと、罰を受けているような感じで、自分のからだに火がついたような熱さだった。このままでは、本当に燃えてしまうような気がして、とっさにまた歌を歌いだした。

そして、自分はここに結婚する二人の為にいるんだと、なるべくエゴを持ち出さないように、気持ちを二人に捧げると、ちょっと熱さが軽くなった。二人を祝福しながら祈りを捧げ続けると、どんどんとまた、ひいていった。なるほど、と、なんだかこの儀式の意味が分かったような気がして、歌い、そして祈り続けた。花嫁の父親のうなり声が聞こえる。彼には、年でとても辛かったのだろう。

2回目が終わり、テントの入り口が少し開くが、今回は、誰も外に出ない様子。シャーマンの言った言葉のなかで、今回は出るなというようなことがあったかもしれない。私はこの瞬間、理性を失い、気づけば、這いつくばって出口の真ん前まで来ていた。はっと我に戻り、境界線があるかのように、一歩、外に踏み出すことができない。と、先ほど唸っていた花嫁の父親が、外に立っており、お前も抜け出すか、と助けてくれた。いやあ、もちろんとばかりに外に出て、キャンプファイヤーの前に行った。涼しい夜の森の空気と、火の心地よい暖かさを身にしめながら、もう戻ることはないだろうと、実感していたら、儀式の案内人が話しかけてきた。一人足りないが、戻れるかと聞く。どうしても無理ならしょうがないけど、と言う。自分一人で、うっかり儀式に来てしまったのなら、今の時点か、とっくの昔に去っていただろうけど、今回は友人の結婚式だということを思い出して、戻る決意をした。お祓いの煙をもう一度全身に浴びて、シャーマンに中に入ることを述べる。入れという合図で、また這いつくばって今度は、ちょっと手前に座る。さっきの女性が心配していないといいと思っていたら、また隣の別の女性が話しかけて来た。大丈夫か、よければ横になれという。狭いなか、横になると、とても楽だった。土の上では熱さも、ずいぶんと低くなった。そして、また歌と太鼓と水掛が続き、今回は、シャーマンが歌い手を募集し、花婿を含む数人が、順番に歌った。3回目は、比較的、穏やかに進んだ。

そして、儀式が無事に終わり、皆、外で抱き合ったり、からだが冷えるのを待ったり、火の前でくつろいだり。私は、あのテントのなかの経験が、まるで、闇と火の地獄のなか、王子と姫を含む一つの古代の民族が、シャーマンのガイドによって、旅を続けているようだったと、思った。そのことを、友人の花婿にも告げて、私というものを迎えてくれたことにお礼を言った。その後、家に戻り、皆で鶏肉の丸焼きやら、果物やらを、手づかみで食べて終わった。その夜は、夢で不思議な声を聞いたがした。



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